危ナイ隣人
「朝ごはん食べるし、ちょっと片付けたい」



そう言うと、ナオくんは「あぁ」と納得してくれたようだった。



「わかった。でも、先に顔洗ってこい。よだれの跡ついてんぞ」


「えっ、嘘ッ!?」


「うん、嘘」



私が咄嗟に口元を隠すと、ナオくんが意地悪に笑った。



「騙されやすすぎだろ」


「なっ……レディに向かって最低の嘘だよ今の!」


「レディ? どこ?」



噛みつく私を前にして、なおキョロキョロ辺りを見渡す仕草をするから、余計に腹が立つ。


くっそー、完全に私で遊んでやがる!



「もういい! 顔洗ってくる!」



むぅっと唇を尖らせて、私はリビングを飛び出した。


廊下に出たところで背後から小さな笑い声が聞こえて、また悔しくなったんだ。



片付けを申し出たのは、もちろん朝ごはんのためでもあったんだけど……何より、感謝の気持ちを行動にしたかったからだ。


昨日、これでもかってくらいナオくんに迷惑かけちゃって、家にまで泊めてもらって。

すっごいバカにしてくるしセクハラもするしムカつくけど、やっぱりありがたいことに変わりはなくて。
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