危ナイ隣人
今すぐに出来るお礼って考えたら、掃除くらいしか思い浮かばなかった。


……まぁ、それしか選択肢がないって思い込めちゃうほど部屋が汚いってことなのかもしんないけど。



キッチンにいるナオくんからゴミ袋を受け取って、机の上のゴミを全部それに突っ込んでいく。


サラダの容器とか、パッケージの切れ端とか……なんでゴミになったその瞬間にゴミ箱に入れないかなぁ。



「……ん? なんだろコレ」



机の下に散らばっていた、カードサイズの紙。ところどころ、黄緑色の印刷(?)もしてある。


QRコードとか数字とかカタカナが書いてあるけど……ますます何コレ?



「ねぇ、コレって捨てていいの?」



全部拾い集めてキッチンに持っていくと、ナオくんが私の手元に視線を寄せた。


それから、興味なさそうにコーヒーをすする。



「あー、いいよ。それ、ハズレ馬券だから」


「バケン?」


「競馬。見たことねぇ?」


「あるっちゃある、けど」



一度だけ。去年の年末、お父さんがテレビで映してたから一緒になって見た。


『年末の風物詩』って題されてたそのレースは、普段サッカーにしか興味のないお父さんですらお金を賭けてて、興味ないながらに大きなレースなんだってことは理解した。
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