危ナイ隣人
「荷物の搬入は済んだのかい?」


「あ、はい。今から片付けするところです」


「そうか。何か困ったことがあったら言いなさいね」



目元にシワを刻んで、管理人さんは優しく言ってくれた。いい人だなぁ。


もう一度お礼を言ってから、部屋がある4階に戻る。



廊下をてくてく歩いて……ふと、足を止めた。



そういえば……お隣さんにも、挨拶ってした方がいいのかな?


ほら、よくあるじゃん。洗剤なんかを持って、「隣に越してきた〇〇ですぅ〜つまらないものですがよかったら」ってヤツ。

さすがに洗剤はないけど……これから暮らしていくんだもん、ご近所付き合いは大事だよね!



──ピーンポーン……


お隣さん──403号室の扉の前に立って、インターホンを鳴らしてみたけど、応答ナシ。

もう一回鳴らしてみる……けど、やっぱり出てこない。


まぁ、それもそうか。今、平日の昼間だもんね。

私は夏休みだけど、世間一般の人達はみーんな働いてるんだ。



「後でまた来ればいいよね」



踵を返して、今度こそ404号室に戻った。今から、地獄の荷解きが始まる。……億劫だなぁ。
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