危ナイ隣人
一つひとつ言葉を選びながら、大家さんが状況から読み取れたことを説明してくれる。


予想外の展開に、私は思わずきょとんとしてしまった。



「前に住んでいた人が退去する時に一通りチェックは行ってるはずなんだけど、甘かったのかもしれないね。担当が僕じゃなかったとは言え、申し訳ない」


「えっ……いや、大家さんに謝ってもらうことじゃ! 私がここを水浸しにしちゃったのは事実ですし……」


「うん、そうだね。それがなければフローリングは保ってたかもしれないし、君に非がないとは言い切れない」



大家さんはにこやかな表情のまま、淡々と話を続ける。


その先の展開を、私は全く読めないでいた。



「このままじゃ引っかかって転ぶかもしれないから、工事に入らせてもらいます。で、その費用はもちろん出してもらうことになるんだけど……」


「……はい」


「うちのマンションと分担で払ってもらいます。と言っても、うちが大部分を負担して、あまり大きな金額にはならないようにするよ」


「えっ」



ニコニコ笑顔を前にただ聞くことしか出来なかったけど、そこでようやく引っかかった。



「そ、そんなのダメです! 傷んでたかもしれない、なんて憶測じゃないですかっ」
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