危ナイ隣人
鮮やかに照らされた朝の景色を背景にして、お隣さんが立っていた。


びっくりして固まっていると、おもむろに彼が口角を上げる。



「何だよその顔。相変わらず色気ねーな」


「うわ、最低。捕まればいいのに」


「捕まるようなことしてねーだろ」



ケラケラと笑う彼は、昨日の朝とは違って髪の毛がちゃんとセットされてる。

普段は前髪を上げて、おでこ出してるんだ。ふぅん。


スーパーに行く途中で遭遇した時ももしかしたらこの髪型だったのかもだけど、恐怖が勝っててどうだったか全く覚えてないや。



「こんな時間にどうしたの? 今からお出かけ?」


「いや、仕事帰り。床がどうなったか気になって、帰る前に寄ってみた」



仕事帰りって、こんな時間に?

昨日の朝に仕事向かってたし、夜勤とかじゃないはずだけど。

相変わらずの得体の知れなさに若干の不安を抱きつつも、悟られないように笑顔をぺたりと貼り付ける。



「見る? びっくりするよ」


「その顔と言い方、嫌な予感しかしねーんだけど」



今度は苦笑いを浮かべるナオくん。

わざわざタメを作って言うことでもないんだけど、と思いながら、扉を開けてフローリングの惨状をお披露目した。
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