危ナイ隣人
何だよ、普段テキトーなくせして。なんなんだよもう。

本気で心配してるってわかる顔、しないでよ。



「お前は工事までの宿を確保できる。俺は家事をしなくて済む。これでwin-winだろ」


「……今もまともに家事してないくせに」


「あ? なんか言ったか」



憎まれ口を叩いても、ナオくんは笑ってくれた。


頑なだった心が、少しずつほぐれていく。



昨日、大家さんが言ってた言葉を思い出した。


これはもしかすると、すっごくありがたい申し出なのかもしれない。

それに、素直に甘えちゃっていいのかもしれない。

人に頼ってばっかりで不本意な今だけど、私なりに恩返ししていけばいいのかも。



「心配してくれて……ありがと。お邪魔させてもらえたら、助かり……マス」


「おう。素直でよろしい」



ナオくんが子どもを褒めるみたいに言うから、ちょっと悔しくて。


でも、彼が笑ってくれたことにホッとして、心の中の波が少し穏やかになったような気がした。



「じゃ、ウチにいる間に必要な荷物まとめてこい」


「わかった」



玄関先で待っててくれるそぶりだったので、私はすぐに体を翻して荷物をまとめに行こうとした。

その背中に、「あ」と何かを思い出したような声がぶつかる。
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