危ナイ隣人
「サンキュ」



渋々了承すると、ナオくんはテーブルの上に置いてあったタバコを手に取ってベランダに出た。


ベランダは2つの部屋のどっちからでも出入りできて、結構広いんだよね。


ナオくんちのベランダには、足の長い椅子と灰皿が置いてあって、ナオくんはそこでよくタバコを吸っている。



「もう、また開けっ放しにしてっ」



タバコを吸って戻ってくるのをソファーに座って待ってようかと思ったけど、ナオくんがベランダの戸を開けたまま出たから、後を追った。



「せめて網戸閉めてって言ってんじゃん」


「あぁ、悪い。癖だわ完全に」


「癖ってねぇ……」



バーなんかにありそうな椅子に腰掛けて、タバコに火をつけるナオくん。

その横顔を見ながら、虫が入るかもしれないのに……と思い、ふとある考えが脳裏に浮かぶ。



「……ねぇ、もしかしてなんだけど」


「ん?」


「私がナオくんちに押しかけた時さ、直前までタバコ吸ってたりしなかった?」



押しかけた日。Gが部屋に現れて、ナオくんちの扉を一心不乱に叩いた日。


私が尋ねると、ナオくんはタバコをくわえながら少し考えてから、視線だけをこちらに向けた。



「あんま覚えてねーけど、吸ってたかもなぁ」
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