危ナイ隣人
「その時もベランダ開けっ放し?」


「吸ってたならそうだろうな。あんまクーラー好きじゃねえから、今月ほとんどつけてないし」



ふーっと煙を吐き出しながら、ナオくんがゆっくり言葉を紡ぐ。


私は網戸を閉めることなく、ベランダのサッシに体を凭せかけて、ぐるぐる思考を巡らせる。


なるほど。……なるほどね。

これはいよいよ私の仮説が現実味を帯びてくるぞ。



「おかしいと思ってたんだよね、引っ越したばっかりでヤツが出るなんて」



もちろん、ヤツというのはGのこと。



「しかも、ヤツが出るまで私もベランダ開けてたの。洗濯物干してたから」


「もしかして、俺か」



どうやら自分でも合点がいったらしく、目をぱかっと開いて、タバコを持った手で自分を指差すナオくん。

灰落ちるよーヤケドするよー。



「可能性なくはないよね。部屋の状況、発生しててもおかしくない感じだったし」


「……まじか。すまん」



頭を下げるでもなく手を合わせるでもないけれど、ナオくんは素直に詫びを入れた。


あまりにサラッと謝られて、ちょっとたじろいでしまう。


違う、謝ってほしかったわけじゃないの。



「あくまで憶測だから……犯人突き止めたかったわけじゃないの、ごめん」



責めるような言い方しちゃってたかなぁ。私の悪いとこだな、反省。
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