危ナイ隣人
しゅんとした私を横目に、ナオくんは傍に置いた灰皿にぐりっとタバコを押し付けた。


そして、椅子から勢いよく立ち上がる。



「十中八九、原因は俺だろ。お前が謝る必要ねんだって」



私の頭をくしゃっと掻いてから、横を通り過ぎて部屋の中に入っていく彼。

一瞬だけ伝わった温もりに蓋をするように、自分の掌を重ねる。


普段テキトーなくせして、こういうとこはオトナなんだよなー。悔しい。



「ほら、ボーッとしてんな。買いもん行くんだろ」


「あ、うん。すぐ支度する!」



部屋着の上から、ソファーにかけていたパーカーを慌てて羽織る。

家の中にいる分にはいいんだけど、雨降ってるしちょっと冷えそうだから。

じめじめしたりヒヤッとしたり、この時期って毎年よく雨が降るけど、嫌だなぁ。



「雨酷くなってきたし、車で行こうぜ」



掌の中でジャラッと鍵を鳴らしながらナオくんがそう言ったのは、エレベーターを目指してフロアの廊下を歩いている時だった。


外壁側をナオくんが歩いてくれてるからあんまり私にはかかってないけど、かなり横降りで強くなっている雨。

この雨の中歩いて買い物に行くのは骨が折れるなぁなんて思ってたけど……



「え、車持ってたの?」
< 70 / 437 >

この作品をシェア

pagetop