危ナイ隣人
エレベーターが1階について、再びナオくんが先を歩き始める。

エントランスを横切った先の通路が、どうやらダイレクトに駐車場に繋がっているみたい。



ナオくんに続いて外に出ると、たくさんの車が停められていた。

その前には鉄柵みたいなのが設置されていて、車の上に車がある。


えーと。こういうの、なんて言うんだっけ。

立体だから、立体駐車場? コレって正式名称なのかなぁ。


なんて思っていた私をよそに、彼はすいすいとそれらの横を通り過ぎていく。



「あれ、ここにあるんじゃないの? 車」


「俺のは、出口近くにある平面駐車場に停めてある。立体だと出るまでに時間かかるからな」


「面倒くさいとかそういう理由?」


「あー……うん、まぁそんな感じ」



肯定されて、ガクッときた。いかにもナオくんらしい理由ではあるけれど。



スタスタ歩いた先にあったのは、意外にも普通の乗用車。

黒くて、結構コンパクトなヤツ。



「なんか、もっと派手なやつ乗ってるのかと思ってた……」


「俺が乗ってそうなやつって言ったら、真っ赤なオープンカーとか?」


「そうそれ。ってそんなワケないでしょ! 苦しいツッコミさせないでよ」


苦々しくナオくんを睨んだけど、彼は相変わらずケタケタ笑ってる。


物言いとかはぶっきらぼうで声色も平坦なくせに、意外と表情豊かなんだよねぇこの人。
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