危ナイ隣人
少しの沈黙が落ちて、それでも息苦しさを感じることもなく私は窓の外に視線を向けた。



「……まだわかんねぇんだけどさ」



信号待ちで車が停止した時、独り言のように小さな声で、ナオくんがぽつりと切り出した。



「もしかしたら、これから数日家を空けることになるかもしれない」


「え……?」


「そうならなきゃいいなとは思ってんだけど……こればっかりはわかんねーから」



信号が青になって、車がゆっくりと加速し始める。


ハンドルを握るナオくんは真っ直ぐに前を見ていて、相変わらず何を考えてるのかよくわかんない。


ただ、時々街灯の明かりに照らされるナオくんの横顔がひどく綺麗に見えたことだけは、確かだった。



「それは……お仕事で?」


「……あぁ。だから、せっかく作ってくれたメシも、もしかしたら無駄にしちまうことがあるかも」



ナオくんの家に身を寄せるようになって、食事担当はもっぱら私だった。

申し訳が立たないと言った私にナオくんが任命してくれた役割。


他にもお風呂洗いとか掃除とか……別々にしている洗濯以外の家事の多くを私が担っているけれど、料理は特別楽しかった。


お母さんに教えてもらって元々好きなのもあったけど、リアクションが一番分かりやすいような気がして。
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