危ナイ隣人
「大丈夫だよ、いざとなったらお隣さん頼るし。結構仲良く──うん、よくしてもらってんだ」



笑顔をぺたりと貼り付ける。


仲良く、と素直に言うにはちょっと悔しかった。



「お隣さんって、前に言ってた人?」


「得体の知れないとか言ってなかったっけ?」


「あれっ、そうだったっけ」



そんなことを言ったような言ってないような、でもやっぱり言った気がする。


じっと私の様子を窺っている2人の視線が、いたたまれなくなって苦笑いを浮かべることしかできない。



「話してみたら案外普通の人だったから、大丈夫だよ。得体の知れない、ってのも私の思い過ごしだったし」



思い過ごしだと言い切れるほど、私は彼のことを知らない。

2人に心配をかけたくないと、出てくる言葉達は自分でも嘘かまことかわからない。



「大丈夫だよ、私は。お隣さん、カッコイイしね。……顔は」


「えっ、イケメンなの!?」


「うん、まぁ顔はね。くるみ、絶対好きだと思う」


「茜が言うってことは、よっぽどじゃない? うわー、いいなぁ!」



キャッキャとはしゃぐくるみと、やれやれといった様子の真帆。


くるみはともかく、付き合いの長い真帆の目はごまかせないかなと思ったけど……気付かれてないみたいでよかった。

2人に、変に心配かけたくないもん。
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