危ナイ隣人
こんな時に、一体何してんのよ……。


ハードボイルドなんかクソくらえ。

外が危険な状態なのに、家にいないナオくんに腹が立つ。



「人に言えない仕事とか、危険すぎるし……!」



ソファーの上で三角座りをして、きゅっと膝を抱き寄せる。


9月下旬でそんなに冷え込んでいるわけじゃないのに、1人の部屋はどこか寒い。



「……ご飯、作んなきゃな」



気が進まないなぁ。

降り続く雨は、どうも気持ちまで沈ませる。



嫌だなぁ……と思いながら、いつのまにか落ちていた視線をテレビに向けると、



「……え?」



地面より低くなった高架下の道路が冠水して、車の半分くらいが水に浸かってしまっている様子が映し出されている。


どうやらその中には人が取り残されているらしく予断を許さない状況で、レインコートを着た警察官と、オレンジ色の制服に身を包んだ消防隊員の姿が一瞬カメラに捉えられた。


カメラが狙うのは冠水した道路の様子で、何やら話し込んでいる様子の彼らが映ったのはほんの数秒だったんだけど、



「ナオ、くん……?」



オレンジ色のほう、ヘルメットで雨を凌いでいる隊員に見覚えがあった。


いつもテキトーなことしか言わないで、のらりくらりとかわして。

あんな見たこともないような真剣な顔を一瞬見ただけじゃ、本人かどうかなんて判断できないけれど。
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