危ナイ隣人
私が提案すると、2人の目がきらりと輝いた。


くるみと同じ倍率の距離まで、真帆が近づいてくる。



「まじ? ならみんなで金ロー見ようよ、今日西島秀樹様が出るの」


「あっ、それ坂上健太郎くんも出てるやつだよね? 私も見たかったの!」


「いいけど、もはやうちで見なくてもいいやつじゃん」



じとーっとした目で見てやると、2人は首を振って声を重ねた。「だから、ついでだって」。


まったくもう。利害が一致したらすーぐ結託すんだから……。



「じゃ、帰りはスーパー寄って帰ろ──」


「御山達、今日なんかすんの?」



私の声を遮るように、木管楽器のように低く弾けるような声が飛んできた。


見なくても誰だかはわかるけど、反射的に視線を向ける。

と、そこにはやっぱり、近藤が立っていた。


ニコニコにこにこ、相変わらず人の良さそうな顔してる。



「うちで鍋パすんの。鍋パを兼ねた金ロー鑑賞会になりそうだけど」


「へぇ、いいな。楽しそう」



なぁ、と同意を求められたのは、近藤の隣に立っていた塚田くん。

表情筋はやはり休止状態で、何を考えているのか読み取れない。


「そうだな」って空気と共に吐き出す様子に、クラス中の女子の視線が集まってるような気さえする。

こりゃ大変だな、塚田くんも。
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