危ナイ隣人
……あ、そうだ。どうせなら。



「2人も来る? 人数多い方が楽しいだろうし。金ロー見るみたいだから、泊まりになると思うけど」



何にも考えず言ったけど、口にしてから、あ、と思い出す。



「ってごめん、近藤は部活あるか」


「いや、今日オフ。楽しそうだし、俺はすっげぇ行きたいけど……」



語尾を濁して、塚田くんに視線を向ける近藤。


その視線を受け取った塚田くんは、小さく息を吐いた。



「御山さんがいいなら。」



返答に間髪入れず、「よっしゃあ!」と声を上げた近藤。

勢いのまま、今夜の金ローの見どころを語り合っていた真帆とくるみの中に飛び込んでいった。


その様子を眺めていると、塚田くんと隣り合わせになる。


すらっとした背丈で、左側の頭上から低い声が聞こえてきた。



「いいの?」


「いいのって、何が?」


「俺まで行って。アイツはともかく、俺なんかクラスも違うし大してお互いのこと知らないのに」



まぁ、確かに。近藤がいなかったら、誘ってもいなかっただろうな。

っていうか、こんなふうに話してもいないだろう。



「塚田くんは、大して仲良くないただの同級生の女子の家には行きたくない?」


「べつに、そういうわけじゃないけど」


「だったらいいじゃん。べつに無理して誘ったんじゃないよ、私も」



左側を見上げて笑って見せると、彼は驚いたように目を開いて、それから少しだけ表情筋を作動させた。
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