危ナイ隣人
「男嫌いかと思ってた」


「え?」


「ほら、男って勝手なこと言うヤツばっかりだろ」



塚田くんと初めてちゃんと喋った日のことを思い出す。


下世話な話の対象にされて、腹が立った私はその男子達を口で撃退したんだっけ。

その時、近藤と塚田くんがフォロー入れてくれたんだった。



「その場合、近藤はどうなるの?」


「アイツはいいヤツだから。……あんなんだし」



塚田くんの指の先にいる近藤は、真帆とくるみと2人に混じって何やら楽しそうに盛り上がっている。


両手を上げて、指をくにゃくにゃさせて……え、ほんとに何してんの?



今の奇妙な動きはともかく。塚田くんの言う通り、ほんとに“いいヤツ”なんだよね。

男女の垣根を超えてるっていうか、なんていうか。

それを察しての、塚田くんのこの発言なんだろう。



「確かに、勝手なことばっかり言ってくる人も多いけど、男嫌いってわけじゃないよ」



塚田くんのさらさらな黒髪の隙間から、バチッと視線が絡む。

何考えてるかはわかんないけど、変に嘘をついたりしない人なんじゃないかと思う。



「近藤も塚田くんも、見た目詐欺だとか言わないでしょ?」



見た目で判断せずに、ちゃんと“私”を見てくれる。

そういう人を、私から排除する理由なんかどこにもない。


私が言うと、黒髪の奥で塚田くんの目がアーチ状に細められた。



「お互い様だな、それは」
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