片隅にだけでも

採用が決まった私はルンルン気分で浮かれてた。

店から自宅はそこまで遠くないから徒歩。

スキップなんかもしちゃったりして曲がり角を曲がる時。

鼓膜が破れるレベルのクラクションが響き渡った。

「え?私…轢かれるんだね。もっと色々経験したかった。恋愛もしたかった」

車が止まってる。
そう実際に目の前に止まっているだけなのだ。

「ふざけんな。あぶねぇ、轢かれてねぇよ!」

「はい?」

運転席の窓から身を乗り出した男がこちらに怒鳴っているのを、キョトンと見つめる栞里。

「だから轢かれてないの。わかる!?あんたの前で俺は車止まってるだろ」

「あ…」

「だから恋愛も出来るし、色々経験出来るように次から気をつけて歩けよな」

「は、はい…」

ようやくこの場の状況を理解し始めた栞里の顔は赤らめていく。

あぁあぁぁ!!!やらかした!!!
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