御曹司は偽婚約者を独占したい
「順序が逆になってしまったけれど、美咲のご両親への挨拶は、また後日──」
「あ、あの……っ」
「うん?」
「すみません、私……。明日のパーティーに着ていく服が……」
言いかけて、俯いた。
その祝賀会……パーティーで着る予定だったドレスや靴は、あの日、彼に返品してもらうように頼んだのだ。
自業自得だけれど、私は明日着ていく服がない。
まさか、安物のドレスで行くわけにもいかないだろうし、どうすればいいのだろう。
「問題ない。あれはそのまま、置いてある」
「え……」
「さっきも言っただろう。俺は美咲以外を、たとえ偽者だとしても、フィアンセにするつもりはなかった。だから、明日は安心して俺の隣にいればいい。心配しなくとも、手取り足取り俺がフォローするから問題ない」
けれど私の心配を一蹴し、口角を上げて笑った彼は、私の髪に口づけた。
「美咲は、俺が選んだ大切な女性(ひと)だ。だから美咲も、俺の隣で堂々としていたらいい」
優しい指が、頬を撫でる。
渡された言葉は、やっぱり砂糖のように甘かった。
結局、その日は仕事終わりに、「ドレスを家に取りにおいで」と誘われて行った先で服を脱がされ、夜遅くまで彼の熱に溶かされた。