御曹司は偽婚約者を独占したい
 

「怪しいなぁ……。まぁでも、とりあえず美咲さんが無事なら良かったですけど……油断しないほうがいいですよ」

「ゆ、油断?」

「そう。だってさぁ、美咲さんって隙だらけだし。お人好しだから、弱みに付け込まれたりして、とんでもないことに巻き込まれたり──」

「あ……」


そのとき、腕にかけたトートバッグの中で携帯電話が震えた。

慌てて手に取って見てみると、近衛さんの名前が表示されている。


「ご、ごめん、またね……! お疲れ様!」

「あ……っ」


顔の前で手を合わせ、挨拶を告げた私はスタッフルームをあとにした。

そしてマスターにも挨拶を済ませ裏口から外に出ると、改めて届いた内容をチェックする。

【仕事は終わったか?】

たった一言、メッセージが届いていた。

近衛さんらしいと言えばらしいけれど、初めて届いたメッセージにしては味気ない。

 
< 41 / 143 >

この作品をシェア

pagetop