御曹司は偽婚約者を独占したい
 

「まぁいいや。それで本題なんだけど、知花さんって明日は何か予定ある?」

「明日ですか?」

「うん。後藤(ごとう)くんが身内に不幸があって、急に来られなくなっちゃってさ。代わりに入ってくれるスタッフを探してるんだけど……」


つまり、私に代わりに仕事に入ってくれということだろう。

申し訳なさそうにこちらの様子を窺うマスターを見て、頭の中で週末のスケジュールを思い浮かべた。

私が勤めているここ、【Cafe Palette(カフェ パレット)】は、この辺りでは知る人ぞ知る名店だ。

絵画を趣味にしているマスターが、性別や世代、国籍問わず色とりどりのお客様が訪れるように……と願ってつけた店名らしい。

アンティーク調にまとめられた店内は暖色系の灯りに包まれていて、心落ち着く空間が演出されていた。

壁にはマスターが描いた味のある絵が飾られており、インテリアによく馴染んでいる。

 
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