御曹司は偽婚約者を独占したい
* * *
「はぁ……」
シャワーを浴び終え、身体を温めた私は先ほど手渡されたバスタオルで身体を拭くと、用意されていた服に袖を通した。
「ぶかぶか……」
用意されていたのは普段遣いらしいネイビーのシャツで、近衛さんのサイズだけあり、当然、私の身体には大きすぎた。
スラックスも用意されていたので履くと、裾を三回も折らなければならなかった。
その割に、ウエストがそこまでサイズが違わないのは、近衛さんのスタイルが良すぎるのが原因だろう。
用意されていたものをすべて身につけ、近衛さんから借りていたコートと、濡れてしまった自分の服一式をハンガーにかける。
ブラジャーも……本当はつけたいけれど、湿っているからつけたらまた身体が冷えてしまうし、借りた服が湿ってしまうから、つけるのは気が引ける。
「はぁ〜……、もう……」
結局、悩んだ末にブラジャーも含めた濡れた服すべてを、浴室乾燥機にかけた。
パンツが濡れなかったのは不幸中の幸いだ。
上もシャツの色はネイビーだし、肌が透けることもない。
だから、ノーブラなのはまぁなんとか誤魔化せるはず……と、今はもう自分に言い聞かせるしかなかった。