御曹司は偽婚約者を独占したい
「それで、もう質問は終わりか?」
「……っ、はい。今の答えを聞いたら、なんだかもう……色々、どうでもよくなってしまいました」
私の返事に、近衛さんが「どうでもいいってことは、喜んでいいのかわからないな」と続けて、小さく笑う。
……もう、これが嘘でもなんでもいい。
今、そんなふうに思う自分はきっと、彼の甘い毒に侵されてしまったのだろう。
だけど、たった一度でも──彼に抱かれるのなら、後悔はないと思った。
パーティーは、二週間後だ。
それが終わるまでの間だけでも、彼に大切にしてもらえるならいいじゃない。
今、そう思えるほど、私は彼に惹かれてしまっている。
「……美咲の肌は、触れているだけで気持ちがいいな」
吐息まじりに耳元で囁かれ、身体の奥が甘く震えた。
例え彼が、私と同じ気持ちではなくても──。
憧れのこの人と、たった一度でも夢を見られるなら、私は絶対に後悔しない。
「もう、焦らすのは終わりでいいか?」
「あの……ひとつだけ、お願いしてもいいですか?」
焦れったそうに背中を撫でていた手と反対の手は、器用に私のシャツのボタンを外し始めていた。