御曹司は偽婚約者を独占したい
「あ……っ」
「こんな気持ちになったのは初めてだ。今夜は、手加減できそうもないことだけは、先に言っておく」
言葉と同時に首筋に噛みつかれ、チクリと甘い痛みが身体に走った。
近衛さんの瞳は酷く情熱的で、指先はとても優しく、甘かった。
「近衛、さん……っ」
それから、どれくらい、そこで熱を交していたのかはわからない。
散々、彼の唇と指先で溶かされたあと、私は彼に抱えられてベッドへと運ばれた。
何度も意識を失い掛けて、そのたびに彼の熱にあてられる。
「──美咲」
だけど終始、私を呼ぶ声は、砂糖のように甘かった。
ようやくすべてが終わった頃には窓の外は白み始めていて、疲れきっていた私は彼の腕に抱かれたまま、眠りについた。