御曹司は偽婚約者を独占したい
「……ん」
目が覚めると、太陽が空高く上がっていた。
昼過ぎまで寝ていたのなんて、久しぶりだ。
上質なシーツは手触りもよく、疲れた身体を優しく包み込んでくれている。
「……おはよう」
「え……。……あっ!」
広いベッドの中で、まどろんでいると、心地の良い声が鼓膜を揺らした。
慌てて飛び起きれば近衛さんがベッドのふちに腰掛けながら、面白そうに、こちらを見ている。
「いい眺めだな」
ハッとして、思わず自分の身体に目を落とした。
見慣れた自分の肌と、昨夜、彼がつけた赤い花が胸元に咲いている。
嘘でしょ……!
「すすす、すみません……!」
昨夜は疲れて、そのまま眠ってしまったのだ。
慌てて身体を隠すように、乱れたリネンを引き寄せた。
そうして私は改めて、彼の前で何事もなかったように座り直して頭を下げる。