御曹司は偽婚約者を独占したい
「とりあえず、コーヒーだけは淹れておいたから、美咲の身支度が済み次第、出掛けよう」
そう言うと、近衛さんは窓の外を見た。
昨夜、彼と熱を交わす前に、二週間後のパーティーで着るドレスを買いに出ようと約束したのだ。
近衛さんは既に着替えを済ませているし、コーヒーまで淹れてくれてあるのだから隙がない。
……一体、どれくらい前に起きていたんだろう。
私よりもよっぽど疲れているはずなのに──と考えたらまた、昨夜の行為が脳裏をよぎり、頬が必然的に熱くなってしまった。
「シャワーも浴びてくるといい」
「あ、ありがとうございます。私、急いで支度しますね」
「別に急がなくてもいいよ。今日は一日フリーだし、夜までたっぷり時間はあるからな」
「ん……っ」
言葉と同時に、近衛さんの唇が耳に触れた。
突然のことに目を見張った私を見て、彼は面白そうに口角を上げる。
「だけど、いつまでもその格好でいられたら、また抱きたくなる。そしたら、せっかくの休日を一日中ベッドの上で過ごす羽目になるから、とりあえずなにか羽織って、バスルームに向かうのが賢明だな」
言い添えて、立ち上がった近衛さんはベッドルームをあとにした。
残された私は、彼の言葉と甘さに目眩を起こして、息を吐くのもやっとだった。