御曹司は偽婚約者を独占したい
 

ああ、もう。こんなふうにされたら、この先が思いやられる。

二週間後にはキッパリと、彼を諦めなければいけないのに。

まるで本物の恋人のように扱われたら、彼とのすべてを思い出にするまで、随分時間がかかりそうだ。


「……っ、もうっ!」


ああ、ダメ。もうやめよう。

考えたらどんどん後ろ向きになって、無意味に悩み続けてしまう。

私は、パンッと両手で自分の頬を叩いて気持ちを切り替えた。

たった二週間だけの恋人期間。 せっかくなら、最後まで彼の隣で笑っていたい。

彼のためにも、きちんとフィアンセを演じられるように、がんばろう。

それで二週間後には、すべてが良い思い出になるようにするんだ。

改めて、そう心に誓った私は足元に落ちていたシャツを拾って羽織ると、バスルームへと急いだ。

 
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