翠雨
あれから何時間経ったのだろうか。
外は薄暗くなり始めていた。
小さい頃に父に貰った懐中時計に目をやると
短針は「6」を指していた。
ろくに進みもしなかったレポートを
カバンに突っ込んで
残りのブラックコーヒーをグイッと飲み干した。
やはり、苦い。
さて、帰りますか。
マスターに目配せをする。
お会計を済ませると
「ブラックコーヒーはお口に合いましたか?」
なんて、
こちらの意表を突く様な事を聞いてきたので
「勿論です」
と笑顔で答えた。
一礼をして、アンティークなドアノブを引く。
久しぶりに外の世界に出た気分だ。
静かに雨が降っている。
最後に太陽の光を浴びたのは
いつだっただろうか?
最近、雨の日が続いている。
梅雨入りなのか、
それにしては早すぎやしないか?
なんて、1人では到底解決できそうにない
疑問を自分に投げかけてはみたものの
分かるはずもない。
さっさと家に帰ることにした。