きみの知らないラブソング
階段を上り自分たちの教室に戻る。
中は大盛況だった。
「ああ広菜ちゃん!茉衣ちゃん!」
相変わらずのはつらつとした声。
販売をそつなくこなしながら、陽加が手を振ってくる。とても楽しそうだ。
茉衣も同じように大きく手を振り返す。
広菜は販売員用の席まで向かい、荷物を置いた。
茉衣もそれに続く。
「手伝いに来てくれたの?」
子犬のような目をして陽加が問う。
「うん!」
笑顔で答える。
広菜も同じように笑って言う。
「うちら予定なくて暇になっちゃってさ」
「すごい助かるよ〜三人だと結構キツくて」
そんな他愛ない話をして手伝いを始めた。
客は次々と押し寄せてくる。
これは売り上げにも期待できそうだ。
茉衣は広菜と共に販売の手伝いをこなしていく。
「ありがとね、もう大丈夫だよ!」
数十分、動き続けただろうか。
陽加の一声で手を止める。思った以上の疲労だ。
思わずふう、と息を吐く。
教室は昼時と比べてほんの少し落ち着いていた。