きみの知らないラブソング

クラスメイトも何人か教室に戻り始めていた。
この後は閉会式のみだ。

初めての文化祭が終わりに近づいている。
何でもないようなことなのに。
ただそれだけで、何となく寂しく感じる。




茉衣はふと思いついた。そして声を出す。



「優太、写真撮ろうよ!」

このひと時を。残したい。
優太と過ごした時を。
ずっと、残しておきたいんだ。



「いいけど?」

優太は一瞬きょとんとしていた。
だけどその後すぐに柔らかい笑みを浮かべた。


隣に並ぶ。近い距離はやっぱり照れ臭い。
茉衣は自分がぎこちない表情をしているのを悟った。笑おうとするほどそれが難しく感じる。



初めてのツーショットを撮った。
一瞬が永遠に変わった。









写真の中の優太は恥ずかしそうに笑っていた。





「ありがとう、優太」

「いや、こっちこそありがと」


何気ないことをして。何気なく笑い合う。
それが茉衣には最高に嬉しい。












絶対に忘れたくない思い出を、

一つ手に入れた文化祭だった。





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