きみの知らないラブソング
第二章
太陽が高くなってきた。
日に日に暑さが増している。
蝉の声も煩くなってきた。
季節は夏・・・ついに7月に入った。
「茉衣!お願いっ勉強教えて!」
広菜が教室の机をバン、と叩いた。
その衝撃で一瞬クラスが静まり返る。妙な沈黙に気が付いた広菜は茉衣を見て照れ臭そうにはにかんだ。
一週間前、文化祭は大成功を収めた。
茉衣たちのクラスが出店したカフェはあまりらの人気で、学校から奨励賞を貰った。だがそれも今ではもう、過去の話となっている。
そんな、青春のど真ん中にいたような茉衣たちを次に待ち受けていたのは期末考査だ。
文化祭の熱はまだ冷めない。
そのせいで気持ちの切り替えが出来ない。
「じゃあ今日、家来る?」
「いいの?!」
元気のない瞳が一瞬にして輝いた。
黒髪のロングヘアーはいかにも落ち着いていて賢そうな見た目だが、そんな広菜は意外と勉強が苦手だ。中学の時からそうだった。
考査が近くなると茉衣の家で勉強会を開くのが暗黙のルールになっているのだ。
リュックを背負い、二人は教室を出る。
「茉衣!広菜!じゃあな」
教室を出る瞬間に声がかかった。
初めての席替えをしてから、廊下側の一番後ろの席に座るのは優太だ。シャーペンを握ったままの右手を軽く挙げて笑っている。
今日は教室に残って勉強をするらしい。
「バイバーイ!」
他愛ない挨拶が、広菜と重なった。