きみの知らないラブソング
それから暫く、広菜はぶつぶつと何やら文句を言いながら、茉衣は黙ったままそれぞれ手を動かした。
仕方なく勉強を始めた割には、よく続いた。
約二時間が過ぎた。
長時間活字と睨めっこをしていると、さすがに疲れが溜まってくる。頭も回らない。
広菜が両手を挙げ、大きく伸びをする。
今日の広菜はいつにもなく真剣だった。
その疲れは並ではないだろう。
「茉衣ぃ疲れた」
泣き出しそうな目をして広菜が見つめてくる。
茉衣も疲れを感じる頃だ。
「そうだね、休もっか」
「やった!」
休憩時間になった途端、広菜はソファに思い切り飛び込み、仰向けに寝そべった。まるで小さな子供のように足をバタバタさせて嬉しそうに動いている。
そのまま少し、話をした。
「あっ」
すると突然。
広菜が思い出したように声を漏らした。
飛び起きるように体を起こす。
「そういえば茉衣、うちの高校の噂知ってる?」
茉衣は首を傾げる。
噂なんて聞いたことがなかった。
広菜は麦茶を勢いよく飲み干す。
そして、話し始めた。