きみの知らないラブソング
あれから一週間ほどが過ぎた。
期末考査が終わった。
今回は勉強が手に付かないまま考査を迎えた。普段は勉強熱心な茉衣にとって、そんなことは生まれて初めてだった。
得意なはずの英語でさえ、ペンが止まった。
まだ結果は返ってこないが相当酷いものだろう。
考査期間は学校が午前中で終わる。
茉衣は放課後になるとすぐにカバンを手を取り家に帰っていた。学校にいたくなかった。
気まずい。
気持ちを知ってからというもの、広菜と上手く話せる気がしない。それは優太とも同じだった。
二人と今までのように笑える気がしない。
最後の試験が終わった今日。
茉衣は足早に教室を去る。
数日間こうしているせいで、教室に残ることに対して違和感を感じるようになった。
茉衣、とかけられた声を振り切って駆ける。
顔なんて見なくても分かるようになった。
あの声は優太だ。
最近はめっきり話しかけることはなくなり、優太も遠慮がちにしか話しかけてこなくなった。
本当はこのままでいたくない。
そう思うのに、上手く行動に移せないのだ。
階段を駆け下りながら唇を噛む。
・・・ごめんね。
自分の足音が不規則に響いた。
校内は騒ついている。それなのに茉衣の周りだけおかしな静けさが漂っている。
独りぼっちになった。茉衣は自分から手を離した。
昇降口まで思い切り走る。
そして立ち止まる。
荒くなった呼吸を整えて、大きくため息をついた。