青いチェリーは熟れることを知らない①
どうみてもちえりたちより若いはずのウフルカットは嫌味な言葉で瑞貴を牽制し、冷やかな視線をちえりに投げつけると、カードキーでガラスの扉を入って行った。
「……あいつも同じ社員なんですか? 瑞貴センパイの知ってるひと?」
「……うん。まぁな……」
「……?」
(……センパイ?)
瑞貴の生返事は気になるが、それよりもウルフカットの男のイメージの悪さに胸やけがする。
(っていうか何あれ!! 感じワルっ!!
瑞貴センパイとは違ったイケメンだけど、噛み付かずにはいられない躾のなってない犬みたいな奴だべさ!! 関わらないようにするべ(関わらないようにしよう)……)
問題児(?)には障らぬが吉。と固く心に誓ったちえり。
そもそもちえりの好みは太陽のように優しくてあたたかい王子様のような瑞貴なのだ。
「あ……、ごめんなチェリー! 俺たちも早く部屋に入ろうぜ!」
努めて明るく振舞った瑞貴がエレベーター前で再度カードキーをメタル調の機械に翳すよう促した。
「う、うん……!」
外から見た社宅は周りのビルがあまりに巨大過ぎて気づかなかったが、そそくさとエレベーターに乗り込んだちえりはボタンの数に生唾を飲み込んだ。
「こ、これってタワーマンション並み……?」
「んーまぁそんなところかな。一番上は五十五階だけど、俺は二十八階だからそうでもないよ」
「ご、五十五階まであって二十八階っ!?
いくら社宅だからって言っても家賃だけで給料ふっとぶくらいじゃないっスかね!?」
「何だお前! 言葉おかしくなってるぞ?」
「だ、だって……っ!」
「社員は相場の十分の一くらいで住まわせてもらえるんだぜ?
さらに勤続年数で安くしてもらってるから俺はタダも同然ってな?」
"タダも同然"は、ちえりが気を負わないよう言ってくれた瑞貴の優しさかもしれない。
可愛らしく片目をつぶってウィンクする瑞貴の王子様スマイルが炸裂して眩暈がする。
(センパイが笑うと眩しすぎて目が潰れるっっ!
っていうか、セキュリティー万全なタワーマンションの二十八階に王子様な瑞貴センパイ付きだなんて……っ若葉ちえり! もはや我が人生に悔いなしっっ!!)
そしてその喜びはそれだけでは留まらなかった。エレベーターを降りて右折し、少し歩いてから部屋の前でもカードキーを翳して扉を開く。
開かれた玄関は実家のちえりの部屋ほどもあるのではないかと疑うくらいに広く、部屋へと繋がる廊下は傷ひとつない新築同然の姿を保っている。
「あ、そうだ……」
靴を脱いで廊下に足を付けた瑞貴が思い立ったように口を開く。
「ベッドひとつしかないからさ、チェリー使ってくれよな」
「え……だ、だめですっ! 私なんて床でも寝れるんだから!! 瑞貴センパイはちゃんとベッドで寝て下さいっ!!」
ベッドの中でイヤーン(笑)な想像をしていた自分が恥ずかしい。
いくら瑞貴と仲が良くともさすがに彼は紳士だった――。
「……あいつも同じ社員なんですか? 瑞貴センパイの知ってるひと?」
「……うん。まぁな……」
「……?」
(……センパイ?)
瑞貴の生返事は気になるが、それよりもウルフカットの男のイメージの悪さに胸やけがする。
(っていうか何あれ!! 感じワルっ!!
瑞貴センパイとは違ったイケメンだけど、噛み付かずにはいられない躾のなってない犬みたいな奴だべさ!! 関わらないようにするべ(関わらないようにしよう)……)
問題児(?)には障らぬが吉。と固く心に誓ったちえり。
そもそもちえりの好みは太陽のように優しくてあたたかい王子様のような瑞貴なのだ。
「あ……、ごめんなチェリー! 俺たちも早く部屋に入ろうぜ!」
努めて明るく振舞った瑞貴がエレベーター前で再度カードキーをメタル調の機械に翳すよう促した。
「う、うん……!」
外から見た社宅は周りのビルがあまりに巨大過ぎて気づかなかったが、そそくさとエレベーターに乗り込んだちえりはボタンの数に生唾を飲み込んだ。
「こ、これってタワーマンション並み……?」
「んーまぁそんなところかな。一番上は五十五階だけど、俺は二十八階だからそうでもないよ」
「ご、五十五階まであって二十八階っ!?
いくら社宅だからって言っても家賃だけで給料ふっとぶくらいじゃないっスかね!?」
「何だお前! 言葉おかしくなってるぞ?」
「だ、だって……っ!」
「社員は相場の十分の一くらいで住まわせてもらえるんだぜ?
さらに勤続年数で安くしてもらってるから俺はタダも同然ってな?」
"タダも同然"は、ちえりが気を負わないよう言ってくれた瑞貴の優しさかもしれない。
可愛らしく片目をつぶってウィンクする瑞貴の王子様スマイルが炸裂して眩暈がする。
(センパイが笑うと眩しすぎて目が潰れるっっ!
っていうか、セキュリティー万全なタワーマンションの二十八階に王子様な瑞貴センパイ付きだなんて……っ若葉ちえり! もはや我が人生に悔いなしっっ!!)
そしてその喜びはそれだけでは留まらなかった。エレベーターを降りて右折し、少し歩いてから部屋の前でもカードキーを翳して扉を開く。
開かれた玄関は実家のちえりの部屋ほどもあるのではないかと疑うくらいに広く、部屋へと繋がる廊下は傷ひとつない新築同然の姿を保っている。
「あ、そうだ……」
靴を脱いで廊下に足を付けた瑞貴が思い立ったように口を開く。
「ベッドひとつしかないからさ、チェリー使ってくれよな」
「え……だ、だめですっ! 私なんて床でも寝れるんだから!! 瑞貴センパイはちゃんとベッドで寝て下さいっ!!」
ベッドの中でイヤーン(笑)な想像をしていた自分が恥ずかしい。
いくら瑞貴と仲が良くともさすがに彼は紳士だった――。