青いチェリーは熟れることを知らない①
マグロとチェリー
「えー……では若葉ちえりさん。VBAやマクロを組んだことは?」
いわゆるバー●ードと呼ばれる商品データを読み込むあの画期的な黒線を頭部に掲げた中年男性が古びた眼鏡を指先で持ち上げながら私に問う。
バーコー●゙の彼の前にはしっかりと"専務"という文字が煌めいていた。
画期的な頭部に目を奪われていたちえりを専門用語がのしかかってくる。
(ぶいびーえー? ……ま、まぐろ?)
もはや後半の部分はちえりの知る魚の名前と化してしまったが、人間聞き慣れない言葉を耳にすると自分が知るものに置き換えてしまうのは仕方ないのかもしれない。
「い、いえ……っ! ぶ、ぶいびーえーもっっっマグロも解体したことはございませんっっっ」
なにを思ったか、ガバっと勢いよく頭を下げたちえり。声の大きさと比例してパイプ椅子がガターン!! と後方へ吹き飛んだ。
すると、面接を一緒に受けている残りの四人のピチピチヤングたちがクスクスと鼻で笑いながら冷ややかな眼差しを向けてくる。どう考えても的外れなことを言ってしまったと悟ったちえりは恥ずかしくて周りを見渡す余裕などないが、ひとりだけ……やけに爽やかに笑う男の声が耳に残った。
「ははっ! なんだそれっ!!」
その言葉がそいつの口から飛び出したとたん、ちえりの顔が羞恥で燃え上がる。
「……っ!!」
「……は、はぁ……。では、次の方……」
頼りなさそうな専務がちえりの履歴書を一番下に差し込むと、それが不合格の意味であることは恐らく間違いないと腹を括った。
終わった! 私の人生終わった!!!!
いわゆるバー●ードと呼ばれる商品データを読み込むあの画期的な黒線を頭部に掲げた中年男性が古びた眼鏡を指先で持ち上げながら私に問う。
バーコー●゙の彼の前にはしっかりと"専務"という文字が煌めいていた。
画期的な頭部に目を奪われていたちえりを専門用語がのしかかってくる。
(ぶいびーえー? ……ま、まぐろ?)
もはや後半の部分はちえりの知る魚の名前と化してしまったが、人間聞き慣れない言葉を耳にすると自分が知るものに置き換えてしまうのは仕方ないのかもしれない。
「い、いえ……っ! ぶ、ぶいびーえーもっっっマグロも解体したことはございませんっっっ」
なにを思ったか、ガバっと勢いよく頭を下げたちえり。声の大きさと比例してパイプ椅子がガターン!! と後方へ吹き飛んだ。
すると、面接を一緒に受けている残りの四人のピチピチヤングたちがクスクスと鼻で笑いながら冷ややかな眼差しを向けてくる。どう考えても的外れなことを言ってしまったと悟ったちえりは恥ずかしくて周りを見渡す余裕などないが、ひとりだけ……やけに爽やかに笑う男の声が耳に残った。
「ははっ! なんだそれっ!!」
その言葉がそいつの口から飛び出したとたん、ちえりの顔が羞恥で燃え上がる。
「……っ!!」
「……は、はぁ……。では、次の方……」
頼りなさそうな専務がちえりの履歴書を一番下に差し込むと、それが不合格の意味であることは恐らく間違いないと腹を括った。
終わった! 私の人生終わった!!!!