青いチェリーは熟れることを知らない①
瑞貴とチェリー、初デートで…!?
そしてやってきた日曜日。
ちょっとだけおしゃれした七分袖のワンピースを纏いながら、気持ちのよい太陽の光を全身で受け止める。
「晴れてよかったな」
「はいっ! 風が心地良いですね!」
「ん、珈琲飲みながら行くかっ」
「大賛成っ!」
白いシャツにジーンズを履いた瑞貴はやや黄色がかったサングラスを着用していたが、チャラい雰囲気は全く感じられない。
端整な顔に柔らかな髪の色、そして上品な仕草から、このサングラスはモデルや芸能人がそのオーラを隠すためのカモフラージュのような役割を担っていた。
(ってか、オーラ隠れてないし! 皆こっち見てるっっ!!
サングラスのその奥が見たくて皆ガン見してるからっっ!!)
瑞貴のあんな姿やこんな姿を知っているちえりはちょっと優越感に浸ってしまう。やがて誘われて足を踏み入れたのは、オレンジとブラウンを基調としたこの洋風な出で立ちの店は天井が高く、燦々と光の注ぐ大きな窓が特徴的で老若男女問わず長年愛されているコーヒーショップだった。
「俺アイスのモカビターにするけどチェリーはどうする?」
「あ、じゃあ私もアイスで……モカチョコレートがいいな」
大人な瑞貴はほろりと苦味のあるデザートドリンクをオーダーし、ちえりは甘めのものを頼んだ。
「こちらモカビターのMサイズとモカチョコレートのMサイズでございます! お待たせ致しました!」
「ありがとうございました~!」
溌剌とした若い店員に声を背にストローを口にくわえながら店をでたふたり。
甘くてもすっきりとした後味のこの珈琲は何杯でもイケそうなくらいおいしい。トッピングされた生クリームアイスは混ぜても良し、バラバラに食しても良しな濃厚クリームだ。
ちえりは行き交う人にぶつからぬ様、それでいて瑞貴から離れてしまわぬように懸命に歩道を歩きながら珈琲に舌鼓をうつ。
日曜日の朝九時半と言えど忙しそうなビジネスマンから制服姿の学生たちまで様々な人の波があり、田舎育ちのちえりがその光景を見ていると今日が休日であることを忘れてしまいそうになったが、肩を並べる瑞貴が心を引き戻してくれた。
「帰りにあの店の珈琲豆買っていこうか。コーヒーメーカーと、コーヒーミルは使ってないのあるし……」
「いいんですか? でも結構高かったような気が……」
ふいに目に飛び込んできた店先のグッズや豆類は、その名店の名を掲げるにふさわしいお値段だったと記憶している。
「いつも頑張ってるご褒美だって思えば安いもんだろ?」
にこりと微笑まれ、胸がキュンとトキメキの鐘を鳴らす。
「……はいっ! 毎日ここの珈琲が飲めるなんて幸せですっ!」
「じゃあ決まりだなっ」
頬を染め、幸せだと微笑むチェリーがとても愛おしい。
赤信号に足を止めると、たくさんの人だかりでふたりの距離はより一層近づいた。
「チェリー……」
ふと名前を呼ばれたちえりは笑顔のまま瑞貴を見上げる。
「は……、」
冷たくて柔らかい何かが唇に重なり、それが瑞貴の唇だと気付いたのは信号が青になってからのことだった――。
ちょっとだけおしゃれした七分袖のワンピースを纏いながら、気持ちのよい太陽の光を全身で受け止める。
「晴れてよかったな」
「はいっ! 風が心地良いですね!」
「ん、珈琲飲みながら行くかっ」
「大賛成っ!」
白いシャツにジーンズを履いた瑞貴はやや黄色がかったサングラスを着用していたが、チャラい雰囲気は全く感じられない。
端整な顔に柔らかな髪の色、そして上品な仕草から、このサングラスはモデルや芸能人がそのオーラを隠すためのカモフラージュのような役割を担っていた。
(ってか、オーラ隠れてないし! 皆こっち見てるっっ!!
サングラスのその奥が見たくて皆ガン見してるからっっ!!)
瑞貴のあんな姿やこんな姿を知っているちえりはちょっと優越感に浸ってしまう。やがて誘われて足を踏み入れたのは、オレンジとブラウンを基調としたこの洋風な出で立ちの店は天井が高く、燦々と光の注ぐ大きな窓が特徴的で老若男女問わず長年愛されているコーヒーショップだった。
「俺アイスのモカビターにするけどチェリーはどうする?」
「あ、じゃあ私もアイスで……モカチョコレートがいいな」
大人な瑞貴はほろりと苦味のあるデザートドリンクをオーダーし、ちえりは甘めのものを頼んだ。
「こちらモカビターのMサイズとモカチョコレートのMサイズでございます! お待たせ致しました!」
「ありがとうございました~!」
溌剌とした若い店員に声を背にストローを口にくわえながら店をでたふたり。
甘くてもすっきりとした後味のこの珈琲は何杯でもイケそうなくらいおいしい。トッピングされた生クリームアイスは混ぜても良し、バラバラに食しても良しな濃厚クリームだ。
ちえりは行き交う人にぶつからぬ様、それでいて瑞貴から離れてしまわぬように懸命に歩道を歩きながら珈琲に舌鼓をうつ。
日曜日の朝九時半と言えど忙しそうなビジネスマンから制服姿の学生たちまで様々な人の波があり、田舎育ちのちえりがその光景を見ていると今日が休日であることを忘れてしまいそうになったが、肩を並べる瑞貴が心を引き戻してくれた。
「帰りにあの店の珈琲豆買っていこうか。コーヒーメーカーと、コーヒーミルは使ってないのあるし……」
「いいんですか? でも結構高かったような気が……」
ふいに目に飛び込んできた店先のグッズや豆類は、その名店の名を掲げるにふさわしいお値段だったと記憶している。
「いつも頑張ってるご褒美だって思えば安いもんだろ?」
にこりと微笑まれ、胸がキュンとトキメキの鐘を鳴らす。
「……はいっ! 毎日ここの珈琲が飲めるなんて幸せですっ!」
「じゃあ決まりだなっ」
頬を染め、幸せだと微笑むチェリーがとても愛おしい。
赤信号に足を止めると、たくさんの人だかりでふたりの距離はより一層近づいた。
「チェリー……」
ふと名前を呼ばれたちえりは笑顔のまま瑞貴を見上げる。
「は……、」
冷たくて柔らかい何かが唇に重なり、それが瑞貴の唇だと気付いたのは信号が青になってからのことだった――。