青いチェリーは熟れることを知らない①
――いい匂い……安心する――
ちえりは嗅いだことのある大好きな匂いに頬をすり寄せた。
すると今度は包まれているような感覚と、さらさらと頬を流れるくすぐったさに笑みが浮かぶ。
「へへっ……」
「……寝言か?」
「……スー……」
「…………」
(……まだ早いな、もう少し寝かせておくか)
緩みっぱなしの顔が瑞貴の胸元に埋められている。その様子を見つめていた瑞貴は声を押し殺して笑い、ちえりの髪をひと撫でしてからその先へ唇を押し当てる。
瑞貴は気持ちよさそうに眠る彼女を起こさぬようベッドを下り、ひとりバスルームへと向かった。
そして十五分後――
スマホで時間を確認しながらリビングへ戻ってきた瑞貴。
頭からタオルをかぶった彼の髪はまだ濡れており、間もなく六時になろうかというところで再び眠っている幼馴染へ目を向ける。
「……グー……」
「…………」
(まだ眠ってる……)
昨夜彼女が掛けてくれたであろう薔薇の毛布はいま、彼女の体を包んでいる。
――日付が変わる頃、薄く目を開いたイケメン王子・瑞貴。
『…………?』
いつもと違う体勢に事態を飲み込めずにいたが、寝起きの良い彼は暗闇に目が慣れるまでジッ動かずにいる。
(この手触りは毛布……)
ゴソゴソと手を動かしていると、今度は無機質ではない何かにぶつかった。
『……?』
(そう言えば俺……チェリーとドラマ見てて……)
『……っ!!』
ようやく目が慣れてきたところでハッと顔を上げる。
『……ご、ごめっ、チェリー……』
瑞貴はちえりの肩に頭を載せているのだとようやく気が付いた。
彼女もまた、こちらに寄りかかるように眠っていたため、不用意にどいてしまうとバランスを崩してしまう可能性が高い。
『スースー……』
『…………』
(……起こすのは可哀想だな)
そう考えた彼は、ふたりの支えとなっている肩の部分に気を付けながら毛布ごとちえりを抱き上げた。
決して痩せ型とは言えない彼女だが、どんな姿であろうと目の前のちえりがベストな瑞貴。それはいつの日も変わることなく今に至っている。
そして彼は迷うことなく自分のベッドへちえりを横たえた。
さらに寝相が悪いと豪語していた彼女の体が冷えてしまわぬよう、薔薇の毛布の上から抱きしめて布団をかけた。頬にかかる髪を指先で梳くと、しっとりと潤う白い肌が目の前にさらされる。
『……おやすみ、チェリー』
極上の王子スマイル。ちえりが見ていたら、さぞ大量の鼻血をほとばしらせていたに違いない。
引き寄せられるように顔を近づけた瑞貴。カタチの良い唇がちえりの頬に落とされ、ちゅっと可愛らしい音をたてた――。
ちえりは嗅いだことのある大好きな匂いに頬をすり寄せた。
すると今度は包まれているような感覚と、さらさらと頬を流れるくすぐったさに笑みが浮かぶ。
「へへっ……」
「……寝言か?」
「……スー……」
「…………」
(……まだ早いな、もう少し寝かせておくか)
緩みっぱなしの顔が瑞貴の胸元に埋められている。その様子を見つめていた瑞貴は声を押し殺して笑い、ちえりの髪をひと撫でしてからその先へ唇を押し当てる。
瑞貴は気持ちよさそうに眠る彼女を起こさぬようベッドを下り、ひとりバスルームへと向かった。
そして十五分後――
スマホで時間を確認しながらリビングへ戻ってきた瑞貴。
頭からタオルをかぶった彼の髪はまだ濡れており、間もなく六時になろうかというところで再び眠っている幼馴染へ目を向ける。
「……グー……」
「…………」
(まだ眠ってる……)
昨夜彼女が掛けてくれたであろう薔薇の毛布はいま、彼女の体を包んでいる。
――日付が変わる頃、薄く目を開いたイケメン王子・瑞貴。
『…………?』
いつもと違う体勢に事態を飲み込めずにいたが、寝起きの良い彼は暗闇に目が慣れるまでジッ動かずにいる。
(この手触りは毛布……)
ゴソゴソと手を動かしていると、今度は無機質ではない何かにぶつかった。
『……?』
(そう言えば俺……チェリーとドラマ見てて……)
『……っ!!』
ようやく目が慣れてきたところでハッと顔を上げる。
『……ご、ごめっ、チェリー……』
瑞貴はちえりの肩に頭を載せているのだとようやく気が付いた。
彼女もまた、こちらに寄りかかるように眠っていたため、不用意にどいてしまうとバランスを崩してしまう可能性が高い。
『スースー……』
『…………』
(……起こすのは可哀想だな)
そう考えた彼は、ふたりの支えとなっている肩の部分に気を付けながら毛布ごとちえりを抱き上げた。
決して痩せ型とは言えない彼女だが、どんな姿であろうと目の前のちえりがベストな瑞貴。それはいつの日も変わることなく今に至っている。
そして彼は迷うことなく自分のベッドへちえりを横たえた。
さらに寝相が悪いと豪語していた彼女の体が冷えてしまわぬよう、薔薇の毛布の上から抱きしめて布団をかけた。頬にかかる髪を指先で梳くと、しっとりと潤う白い肌が目の前にさらされる。
『……おやすみ、チェリー』
極上の王子スマイル。ちえりが見ていたら、さぞ大量の鼻血をほとばしらせていたに違いない。
引き寄せられるように顔を近づけた瑞貴。カタチの良い唇がちえりの頬に落とされ、ちゅっと可愛らしい音をたてた――。