青いチェリーは熟れることを知らない①
――そうして社宅に戻ってきた鳥居とちえり。
二十八階の通路を歩いていると、瑞貴との愛の巣が目先に見えた。
「…………」
(あの部屋に今日は誰も帰らないんだ……)
瑞貴と一緒に暮らすようになってから離れ離れの夜は初めてだった。まして部屋まで違うとなると、ますます瑞貴との距離を遠くに感じてしまう。
(今朝は幸せだったな……)
昨夜ソファで眠ってしまったはずのちえりだが、朝目覚めてみるとそこは瑞貴のベッド上だった。思い返してみても彼が運んでくれたことは確かで、直前まで一緒に眠っていたに違いない。
「ほら、ボサっとすんな」
いつのまにか鳥居宅の扉が開かれ、孤独なちえりを迎い入れてくれた。
「お邪魔します……」
ここに来るのは何度目だろうと考えながらパンプスを脱ぐと――
――キャワンッ!! キャンキャンッッ!!
ドアが閉まっている突き当りの部屋、リビングからわんこチェリーの鳴き声が響いた。
(……犬? あっ……)
「チェリー?」
顔見知りである可愛い生き物に会いたいがために勝手に人の家を闊歩する。家主である鳥居を玄関に取り残したまま、リビングのドアを開けると……
――タッ!
勢いよく飛び出してきた可愛いそれにちえりはしゃがんで小さな体を抱きしめる。飛びついた凛々しい顔立ちの彼女は激しく尾を振りながら人間チェリーの顔を舐めまわし、熱烈な歓迎を体中であらわす。
「ひさしぶり! きゃはっありがとうチェリー、今夜お邪魔するねっ」
二十八階の通路を歩いていると、瑞貴との愛の巣が目先に見えた。
「…………」
(あの部屋に今日は誰も帰らないんだ……)
瑞貴と一緒に暮らすようになってから離れ離れの夜は初めてだった。まして部屋まで違うとなると、ますます瑞貴との距離を遠くに感じてしまう。
(今朝は幸せだったな……)
昨夜ソファで眠ってしまったはずのちえりだが、朝目覚めてみるとそこは瑞貴のベッド上だった。思い返してみても彼が運んでくれたことは確かで、直前まで一緒に眠っていたに違いない。
「ほら、ボサっとすんな」
いつのまにか鳥居宅の扉が開かれ、孤独なちえりを迎い入れてくれた。
「お邪魔します……」
ここに来るのは何度目だろうと考えながらパンプスを脱ぐと――
――キャワンッ!! キャンキャンッッ!!
ドアが閉まっている突き当りの部屋、リビングからわんこチェリーの鳴き声が響いた。
(……犬? あっ……)
「チェリー?」
顔見知りである可愛い生き物に会いたいがために勝手に人の家を闊歩する。家主である鳥居を玄関に取り残したまま、リビングのドアを開けると……
――タッ!
勢いよく飛び出してきた可愛いそれにちえりはしゃがんで小さな体を抱きしめる。飛びついた凛々しい顔立ちの彼女は激しく尾を振りながら人間チェリーの顔を舐めまわし、熱烈な歓迎を体中であらわす。
「ひさしぶり! きゃはっありがとうチェリー、今夜お邪魔するねっ」