【短編】ホワイトデーには花束を、オレンジデーには甘いキスを(三人称)
早朝、冷え込むオフィスで佳織はキーボードをたたいていた。別段、仕事が立て込んでいたわけではなく、同僚の萌絵につきあわされてのことだった。萌絵もかじかむ手で書類を整理している。胸まであるロングヘアはふわりとまかれていて、彼女の動きとともに揺れている。
そこへ課長が出社してきて、オフィスにいた数人の社員たちが明るく挨拶をした。それに応え、課長が大きな声で挨拶を返す。長身の彼から出される声は艶のある低い声。それを聞いた萌絵の顔がぱあっと明るくなる。それと同時に彼女の頬にポッと赤みがさしたのを佳織は見逃さなかった。そう、萌絵は課長が好きなのだ。
萌絵は手を止め、佳織のそばに来て耳打ちした。ほんのり香るのはフルーツ系の甘い香水。自分とは違って女子力の高い女の子だ。
「い、今の、私に向けてあいさつしてくれたよね?」
「うん……そうかもね」
そこへ課長が出社してきて、オフィスにいた数人の社員たちが明るく挨拶をした。それに応え、課長が大きな声で挨拶を返す。長身の彼から出される声は艶のある低い声。それを聞いた萌絵の顔がぱあっと明るくなる。それと同時に彼女の頬にポッと赤みがさしたのを佳織は見逃さなかった。そう、萌絵は課長が好きなのだ。
萌絵は手を止め、佳織のそばに来て耳打ちした。ほんのり香るのはフルーツ系の甘い香水。自分とは違って女子力の高い女の子だ。
「い、今の、私に向けてあいさつしてくれたよね?」
「うん……そうかもね」
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