【短編】ホワイトデーには花束を、オレンジデーには甘いキスを(三人称)
真佐課長が上着を脱いで背もたれにかけた。淡いブルーのシャツの上からも肩や胸が張っているのが分かる。大ぶりなストライプ柄のネクタイも彼のはっきりとした二重瞼にはちょうどいい。清潔感のある白い肌、長い指先。つい、見とれてしまう。
(あ……)
佳織は息をのんだ。だって真佐課長と目が合ったから。いつものように笑ってはいない、怒ったよな顔。その鋭い視線に佳織は動けなくなった。でもすぐに逸らされ、課長は机上のモニターを見つめていた。
(なんだったのかな)
以前からこんな風に目が合うことがあった。最近その回数が増えたように思う。見つめられているというよりはにらまれている、といったほうがしっくりくる。なにか仕事で間違えたのかとも思うけど、心当たりは全くない。そもそも何か問題があればすぐに課長は呼び出す。それもないのだから、まったく別の何か……プライベートでのなにか? でもさみしいことに仕事以外には、彼と佳織にはなんの接点もなかった。
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