【短編】ホワイトデーには花束を、オレンジデーには甘いキスを(三人称)
「ちょ……」
課長は佳織の返事も聞かず、彼女の腕をつかむとぐいぐい引っ張った。力強い課長の腕と前からほんのりと漂う課長の香水に佳織は更にどきどきしてしまった。
*-*-*
あれよあれよという間にジムに連れていかれ、ビジターの申込書にサインをするとトレーニングウェアとタオルの一式を渡された。更衣室で着替えてトレーニングルームに出ると課長が待ち構えていた。自前であろう黒のTシャツと半パンは課長の身体にフィットしていて、着るものの上から彼の逞しい骨格がうかがえた。
(スーツのときも肩幅はあると思っていたけど、なんか……)
軽いストレッチをしたあと、マシンに乗って筋力トレーニングをする。課長は佳織にアドバイスをしながら、すぐ隣でトレーニングをしていた。
「き、きついです……腕がもう……」
「ほら、もう少し。あと3回でいい」
「はい、1……2……3。ふう」
「よし。じゃあ次に」
「え? や、休みませんか?」
「しょうがないな。じゃあ休憩してて。俺はちょっと走ってくるから」
課長がそう言ってランニングマシンで走り始めた。