アホほど美少女が転校してきた話
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それから転校生は私にべったりくっつくようになった。
1ヶ月も顔を合わせばそれなりに目を見て話すようになれてくる。あの変人丸出しの自己紹介のなにが気に入ったのか、彼女はあれ以降私のことを『加奈ちゃん』と呼んでいた。
まぁ私は神無月さん呼びなんだけど。
いや、そりゃあ、神無月さんからは名前で呼んでほしいなんて言われるけど、ムリだろ。神様に殺されるから。
そういえば、私が神無月さんに懐かれているのが気に食わない派の人たちは、毎日のように放課後回文の練習をしているようだ。
この間超長文の回文を書き上げて神無月さんに見せに行った結果、「うーん、長くてわかんない!」と一蹴されてたけど。
それ以外の人は、私を口実に神無月さんに話しかけている。完全にダシにされているし、この間なんてたいして話したこともなかった女子といつの間にか親友になっていたらしい。
「私、中野の親友なの! よろしくね☆」なんてバチコーンと神無月さんにウインクしているところを見せられて、私は一体どんな表情をすればよかったのか。
まぁ、そのおかげで髪色のせいかヤンキーだと避けられていた私に話しかけてくれる人が現れたことには感謝する。
「悠ちゃん、次体育だよ!」
「えっ、あっ、そうなんだ……」
「また見学?」
「う、うん……」
「体弱いのも大変だね」
神無月さんが自称私の親友さんと話しているのを聞いて、ロッカーから体操服を取り出すことにした。