アホほど美少女が転校してきた話
これは、初めてではない。体育のある日は、必ず神無月さんは先に行くのだ。私は自称私の親友さんの悲しそうな顔を横目に、素早く着替え始めた。
――確信めいた疑惑の答え合わせをしに、神無月さんを追いかけるために。
「神無月さん」
階段で彼女を呼び止める。神無月さんはビクリと肩を揺らし、振り向いて私の顔を確認すると気まずそうに立ち止まってくれた。
私は近づいて、強引に神無月さんの手を取った。そして、ぎゅっと握りしめる。
「へ!? あ、あの、加奈ちゃん!?」
顔を真っ赤に染めて慌てる神無月さん。私はそれに目を細めた。
「神無月さん、違ったら全力で否定してもらってかまわないんだけど」
「……あ……う、うん……」
何かを悟った神無月さんの、不安そうにごくりと喉を鳴らす音が聞こえた。
「神無月さんって、女子が好きなの?」
「―――っ」
……ああ、確定だ。神無月さんの絶望した表情が、すべてを物語っている。
「…………引い、た?」
うつむく神無月さん。それに返事しようとしたとき、廊下にバタバタと駆ける音が響いた。
どうやら皆、体操服に着替え終わったみたいだ。どうしたものかと気をとられていると、ぐいと繋がれた手が引っ張られる。
「……こっち」
あれ、神無月さんってか弱い美少女なんじゃなかったっけ。なんか、すごく力が強い。もしかして、体育を休むための口実だったのか?