アホほど美少女が転校してきた話
引っ張られるがままに付いていくと、女子トイレの個室に入れられた。いきなり手を離されたことでバランスを崩して、便器に腰を下ろす形となってしまう。
えっ、個室? ……大丈夫か、私の貞操。
「加奈ちゃんって鋭いんだね、びっくりしちゃった」
予鈴が鳴った。もう遅刻確定だ。このままサボろう。
「引いた? 引いたよね? だってこんな、気持ち悪いもんね? お願いだから―――バラすなよ」
ぐっと神無月さんとの距離が縮まる。彼女の端正な顔立ちに、少しドキドキしてしまう。
というか、今の声……すっごく低かったんだけど……まるで男子みたいな……。
うわぁ、これ、脅されるパターン? ええー、そんな、同性愛者が知られたくらいで……私なんか言いふらせるような友達もいないのに。
「あの、私、別に誰にも言わない……というか、言ったところで誰も信じないと思うし……」
「……」
「それに、最近はだいぶ世間も寛容になってきてるし、そこまで気にすることでもないと思うよ! ―――同性愛!」
「………。……………………んん?」
「えっ?」
えっなになになに。私また神無月さんの機嫌損ねることした?
眉間にしわを寄せて、神無月さんは私を値踏みしてくる。じろじろと見定めて、私の反応を確認しているようだ。
うっ、近い近い近い。美少女に見つめられるのってこんなにドキドキするんだ。顔怖いけど。同性すら虜にするなんて、美少女ってすごい。美少女で世界征服できそうだ。顔怖いけど。