私は醜いアヒルの子
「…………」
ゆっくりと目を開けると、いつもと変わらない自分の部屋の天井が見える。

鼻に馴染んだ優しい木の香り
朝の光によって夜とは色が変わる障子
チチチチ、と鳴く小鳥の声

安堵の気持ちでいっぱいになる。
──────ここにいる
"大丈夫"内心を落ち着かせ、敷布団から少し汗ばんだ身を起こす。
ゆっくりとした動作で丁寧に布団を畳み押し入れに詰め込む。
布団がなくなった分広くなった部屋で大きく伸びをする。
「んーっ…」
伸びをすると体を呼び起こしているように思える。
柔らかい布地で作られた寝間きを脱ぎ、少しパリッとした感触の和服に着替える。
小さい頃から着てきたせいか、和服を着るとシャキッとした気持ちになるのだ。

そしてこれも同様に小さい頃から飲んできた錠剤の薬を飲む。

背中の真ん中程まである長い黒髪を優しく梳かし部屋の中にある洗面台で顔を洗う。
さっぱりした面持ちで障子の取手に手を添え
────────カタリ
皆を起こさぬようそっと部屋を出ると、ひんやりと朝特有の冷気と香りが体を包む。
自分の部屋の前にある中庭を見渡し、すぅっと息を吸い、
そして囁くのだ。
「おはようございます、ソリュージェ」
、と。
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