初恋をもう一度。【完】

「寂しくないけど、幸せそうなカップル見ると少し空しくなるよね」

送信してから、懸命に彼氏いないアピールをしているみたいで少し恥ずかしくなった。

「あ、今から夜ご飯食べまーす」

誤魔化すように立て続けにメッセージを送る。

実はもう夕飯を食べ始めていたくせに。

食べながら延々スマホをいじっていると、「ごはん食べ終わってからにしたら?」と母にたしなめられた。

でもそれを、「業務連絡だから」と信じられないほど適当な言い訳であしらう。

『うーん、でも』

「なに?」

『今年は、俺がいるじゃん?』

俺がいるじゃん、ってどういう意味?

だって、わたし達は恋人ではないし、会うどころか、近くにすらいない。

「俺と話してるから寂しくないだろってこと?」

『まあね。それよりごはん食べ終わった?』

「あ、もうすぐ終わるよ」

『食べ終わったら教えて』

「了解、ありがと」

食事がとりにくいと思って、気を使ってくれたのだろうか。

鈴木くんとのお喋りより大事なことなんて、なにもないのに。

わたしはアプリを一旦閉じて、残りのおかずを急いで口に運んだ。
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