初恋をもう一度。【完】
「もしもし」
『……もしもし、奈々ちゃん?』
6年振りに聞く鈴木くんの声。
声変わりで低くなったはずのその声は、驚くほど自然に耳に馴染んだ。
「うん、奈々です」
答える声が、少し震えてしまった。
嬉しいとかドキドキとかそういう感情を飛び越して、ただ胸がいっぱいで泣きそうになる。
『……奈々ちゃんの声、全然変わってない』
少し笑いながら言った彼の背後から、車が通る音が小さく聞こえた。
「鈴木くん、外にいるの?」
『あのさ、実は』
「ん?」
『今、駅にいるんだけど』
「駅? 出かけるの?」
『俺、栃木駅にいるんだよね』
「栃木駅? …………ええっ!?」
思わず口から漏れる、素っ頓狂な声。
その声を聞いた鈴木くんは楽しげに笑った。
『ね、奈々ちゃんちって、どこら辺?』
「ううん、わたしがすぐ駅まで行くから! 待ってて」
まだ部屋着に着替えてなくてよかった。
コートとマフラーとバッグをまとめて手にすると、わたしは慌てて部屋を飛び出した。