初恋をもう一度。【完】

早足で歩くわたしの吐く息は真っ白。

さっきバイトから帰った頃に比べると、さらに気温が下がっているようだ。

「寒いからどこか入っててね」

少し息が上がった自分の声が、夜の澄んだ空気を震わせる。

『大丈夫、駅の中にいるよ』

「もうすぐ着くから。ちゃんと待っててね」

『あはは。ちゃんと待ってるから大丈夫』


鈴木くんが、会いに来てくれた。

会いたいって言ったら、会いに来てくれた。

ずっとずっと会いたかった鈴木くんが。

あと少しで、鈴木くんに会える──。


やがて、透明な大三角形を屋根に携えた建物が、視界に入ってきた。

「……鈴木くん、着いたよ。どこ?」

広いロータリーに着いたわたしは、キョロキョロと辺りを見渡しながら、駅へと近づいていく。

『え、ほんと? 今外に………………あ』

そこで、プツリと通話が途切れた。
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