初恋をもう一度。【完】
わたし達は駅を離れ、イブの町を歩き出した。
普段と変わらず、人の通りはそう多くもない。
大きな店もあまりないこの町は、クリスマスだからと言っても特別賑わったりはしないのだろう。
でも、街路樹のちょっとしたイルミネーションのおかげで、見慣れた古い街並みがずいぶんロマンチックだ。
空の深い藍には、星がたくさん瞬いている。
そういえばここ最近忙しくて、空を見上げる余裕もなかった。
星なんて見たのは久しぶりだ。
それを一緒に見ているのが鈴木くんでよかったと、心から思った。
まるで6年間の空白を埋めるかのように、どちらからともなく手を繋ぐ。
「ほんとは昨日、あのメッセ読んですぐ飛んで来たかったんだよね」
「そうなの?」
「うん。でも時間的に無理そうだったし、どうせならイブのサプライズにしようかなって」
鈴木くんは悪戯っぽく笑った。