初恋をもう一度。【完】
「寒くない? どっかあったかい所入る?」
そう訊かれて、今は何時だろうとスマホを取り出す。
時刻は夜8時を過ぎたところだった。
飲食店はまだまだやっていそうだけれど、わたしはさっき早めの夕飯を食べてしまったばかりだ。
そう思ってから、わたしは慌てた。
「鈴木くん、気づかなくてごめん。もしかして夜ごはん食べてない?」
会えた喜びで胸がいっぱい過ぎて、全然考えもしなかったのだ。
「食べたよ。新幹線の中で軽く」
「ほんと? お腹すいてない? 大丈夫?」
「あはは、まじで大丈夫。それより寒くない?」
「うん、わたしは平気」
確かに外はとても寒くて、でもわたしは鈴木くんとこうして手を繋いで歩いていたかったのだ。
「鈴木くん、寒い?」
「うん、寒い」
「ええっ、じゃあやっぱりどこか入る? ファミレスとか」
「でも、寒くてもいいかな」
鈴木くんはふにゃりと笑って、繋がれた手にぎゅっと力を込めた。
「手、離したくないし」
「……うん」
同じことを考えてくれていたのが嬉しくて、それ以上に照れてしまって顔が熱くなった。
寒さなんて、一瞬で忘れるくらいに。