初恋をもう一度。【完】

通りかかった小さな公園に立ち寄って、ベンチに並んで座った。

石のベンチは氷みたいにひんやりとしていて、お尻をつけた途端、わたしも鈴木くんも思わず「わっ!」「冷てっ!」と声を上げながら軽く飛び上がった。

二人で笑って、それから寄り添うように座った。

「鈴木くん、何時までいられるの?」

「終電は10時かな」

「そっか」

あと1時間半くらいしか一緒にいられない。

この幸せな時間がいつまでも続けばいいのに。

会えただけで幸せだったのに、ついそんな欲張ったことを考えてしまう。

そんな気持ちが顔に出ていたのだろうか。

「あのさ、上野から小山まで、新幹線使わないで何分か知ってる?」

鈴木くんが、突然そんなことを尋ねた。

「え……うんと、2時間半くらい?」

大学まで1時間半かかるから、プラス1時間。

そう考えて答えた。

「ううん、1時間ちょい」

「えっ、そうなの?」

「うん。だから小山から栃木に移動するとか、いろいろ込みでやっと2時間」

電車で2時間。

近くはないけれど、思っていたよりは近い。

「だから、いつでも会えるよ」

「……うん、ありがとう。今度はわたしが会いに行く」

「うん、待ってる」

鈴木くんはとても嬉しそうに目を細めた。
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